新世界は怖くない？

天王寺区のもう一つの目玉、それは通天閣と新世界。

明治の昔、博覧会跡地にできた遊園地「ルナパーク」が
その始まりで、最寄り駅は地下鉄堺筋線「動物園前」駅です。

新世界、ルナパーク、動物園。
この場所にはきっと楽しい遊園地があるんだ、と
子供心に信じたのは無理からぬところ。
一人でノコノコと新世界へ行ってみたのは
確か小学生の頃でしたか。

阪急電車なら淡路駅で一回乗り換えると地下鉄に接続し、
終点の動物園前駅まで一気に連れて行ってくれるから、
当時でも小学生が一人で迷う事はありませんでした。

でもこの地下鉄というのがいけません。
なにしろ地上に上がるまで様子が分からないんですから。

駅を降りて目にしたものは、
確かに遊園地には違いないのでしょうけれど、
それは子供の為ではなく
お酒や風俗が好きな大人の為の遊園地でした。

タバコと焼き鳥と、その他ワケの分からない煙が充満し、
饐えた匂いで淀んだ空気。
暗い店の奥から聞こえる怒鳴り声。
道端でしゃがみ込む妙な痩せ方をした老人が、
ぎょろりとこちらを睨みます。

スレてない少年にとって、
それはSF小説に出てくる退廃した未来そのものの光景でした。
ビビった僕は通天閣の下まで辿り着けずに
ソソクサと逃げ帰ったのでありました。

以来、ここに来るのは数十年ぶりということになります。



子供の頃の印象なんてアテになったもんじゃありませんが、
新世界はすっかり様変わり。
あの退廃的だった雰囲気はマボロシのように消え去り、
かわりに広がっていたのは
大阪的ごちゃごちゃ感が楽しい明るく賑やかな通りです。



そこら中に乱立する串カツ屋の盛況ぶりは、
グルメ番組で「二度付け禁止」が宣伝された成果に違いありません。

そういえば、
うら若い女子グループやカップルの姿が目立ちますし。

あの時、通天閣への道は遥か遠く、
埃と煙に霞んでいましたが
今日は実にあっけなく
タワーの下まで辿り着けてしまったのでした。

「これはひょっとすると、
お酒とナニが好きなスレた大人になってしまったからかもしれん。」

魔法が利くのは純真な子供の間だけなのだ、
と納得しそうになってハタと立ち止まりました。

今、南の通りから通天閣をくぐり抜けてきたところです。
ようするにこちらは通天閣の北側なのですが、
様子が一変しています。



閑散とした通り、
閉じたシャッター、場末な感じのスナックの看板。



たった数十メートル移動しただけで、
そこは寂れた歓楽街に変わっていました。

実はこれこそ新世界の本当の姿で、
駅前の賑わいはハリボテなのかも。

戻って通天閣のゲートをくぐり直し、
確かめようとしましたが、
やめときました。

お店で串カツ食べてた可愛い女子が
ブタさんに変身してたら怖いですもんね。

！！！

新世界には今でもきっと魔法にかかっています。
日が落ちてカミ様達がやってくる前に
退散することにいたしましょう。