那智の大滝


この場所になら、きっといまでも
神様が降りてくるにちがいありません。

圧倒的な力によって押し上げられた空を覆う垂直の段差から
いきもののように滝壺の岩へめがけて溢れ落ち砕ける滝の瀑音が
静かな山に響き
そして染みわたっていきます。


滝壺から平安の昔に拓かれたという参道の坂道を、たっぷり三十分ほど登ると有名な青岸渡寺の三重塔が見えてきます。写真でみると滝の真横に建てられているように見えますが、実はけっこう離れていたのですね。
その距離を感じなくなるほど、あの滝が大きいということなのでしょう。
境内の拓かれた山は存外に険しくて滝を眺望できる場所は限られており、その風景はもうどこかで見た写真のとおりなのですが、それでもやはり、この場に立ち眺める景色には素直に感動できます。
それはたぶん、畏れるべきものを畏れ敬う熊野という土地が、俗化しがちな観光地では失われてしまう厳かさを、ずっと今でも保っているからなのでしょう。


その雄々しくも美しい姿と
それを畏れ敬うひとのこころへ敬意を表し
滝へむかってもう一度、静かに手を合わせました。



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