計算機の系譜その2 Intel 4004

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なんだか冴えないデザインのレジのようですが、

この機械の開発が、その後のパーソナル・コンピューターへと繋がる大きな発明を生みました。

「インテルはいってる」って言われても、いったい何が入ってるのか分からない普通の方々にはこれまたどうでもいい話なのですが、この「ビジコン141-PF」の中には世界で最初のワンチップCPUIntel 4004が搭載されているのです。

PCが存在しない当時は、商用計算はそろばんか電卓で行っていました。
国産電卓メーカーだったビジコン社には、独自の関数計算を行いたい顧客からのさまざまな要望が寄せられ、いちいち論理回路をつくってちゃ割に合わない、ということで

「プログラムできる汎用的な計算回路を」

と、できたての会社だったインテル社に開発を発注し、生まれたのが4004でした。
その開発には、当時ビジコンの社員だった嶋正利氏も参加していました。
実装論理回路とLSIのパターン設計は、彼がやり遂げた仕事だそうです。
彼はその後、PCの黎明期から初期の爆発的普及を支えた intel 8080やZ80といった伝説的CPUの開発にも携わりました。
(NECのPC8800シリーズとか、PC/AT互換機とかに入ってたCPU。くどいようですが、知らない人にはどうでもいい話です。)

残念ながら絶版になって今では入手困難ですが、彼自身が著した当時の開発秘話が「わが青春の4004」という本になっています。
センチメンタルなタイトルから推察できるように内容は多分に感傷的な部分がありますが、大成功を収めたと思って日本に帰ってみればせっかく開発したチップを電卓の部品としか見られず、米国に渡ってザイログ社の設立に参加、そこで開発したZ80は世界的な大ヒット。でも成功が大きすぎて次のステップを見誤り会社は敢え無く解散、といった波乱万丈の自分史をベースに、「回路パターンの余白に自分の家紋を入れてみた」なんてエピソードを交えたチップの専門的な回路解説もあり、まあそれは興味のない人にとってみればチンプンカンプンな呪文のようなものですが、この本を手に取ったころの僕はちょうどこの業界へ進みたいと願っていた頃なので、夢中になって読んだものです。
黄ばみかけたその本は、今でも僕の本棚のいちばん居心地のいい場所を占めています。

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4004は当初ビジコン社への専売契約で開発されましたがその後契約変更を行ってインテル社が販売権を得、外部メモリや入出力制御の周辺LSIとともにMCS-4ファミリーとして戦略的なマーケティングを行い、世界企業インテル帝国の原点となりました。

一方のビジコン社は電卓の価格競争のあおりをうけて倒産の憂き目にあっています。
(※なお、その後ビジコン社は再建され存続しています。)

「ビジコン141-PF」と「Intel 4004」は
国立科学博物館の「地球館」2Fに並んで展示されています。



シリーズ:国立科学博物館


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