びっしりと並んだ真空管の列。
国産で初めての実用稼働に成功した電子コンピュータ FUJIC。
聞き慣れない名前ですが、
富士写真フィルムが自社使用のために自作したものです。
驚く事は、このコンピュータは社員だった岡崎文次氏が、
7年の歳月をかけてほぼ単独で開発したということです。
資料集めから初めて、部品の調達、オシロスコープなどの計測機器まで自作して
まったくのゼロからここまでのシステムを組み上げたというのですから、
その根気の強さもそうですが、それを許していた会社の、おおらかな環境があった
ということもまた驚きです。
年次はおろか4半期単位で結果を求められる現在の企業環境にあれば、
すぐさま開発中止に追い込まれるはずのプロジェクトですものね。
真ん中のキーボードは入力装置ではなく出力装置。
これはタイプライターで、一つ一つのキーにワイヤーが張られ、
機械じかけでキーが引っ張っぱられて紙に文字を印字するという
なんともユニークなものです。
過去の成功例にとらわれて失敗をおそれ、
何かしら新しい事を始めようとしているにも関わらず
過去の事例とか実績とかにこだわってしまう。
現在の日本はそんな雰囲気に覆われているようにも見えます。
お世辞にも洗練されたデザインとはいえないこの機械は、
素晴らしい発明を生み出すためには
余裕とか度量とかいったものが必要なんじゃないか、
と問いかけているのかもしれません。
シリーズ:国立科学博物館
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