矢切の渡し


すぐそこに立派な橋がかかっていて
カンタンに、しかもタダで川を渡ることができるわけで、
わざわざ時間とお金を使って船を使う実利的な理由は
とうの昔に失なわれているハズですが、
大雨の濁流が残していった流木と
見分けがつかぬほど粗末な造りの桟橋の前には、
渡船を待つ客で時に行列ができるほど。

大昔の小説や流行歌だけで
これほどの需要を喚起できるとは思えませんから
きっと傍目より深い魅力があるのでしょう。

あるいは、
甘酸っぱい初恋の想い出とか
未練とか後悔とか湿っぽいロマンスとかは
僕が思っている以上に人に好まれているのかもしれませんけど。

ただ、穏やかな川面をゆるゆると渡る平船は
それだけで絵になるってことは確かなようです。


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