明日館




無秩序に生えるビルの群れのたくましさに圧倒されながら
池袋駅前の雑踏をすり抜け、
まるでラリーカーのようなテクニックを披露する宅急便の後ろから
おそるおそる狭いクランクコーナーの角を曲がってみると
そこだけ結界が張られたように
ゆったりと時間が流れる空間がありました。

自由学園明日館。

正面の大きな窓の
柔らかな幾何学直線が印象的な建物です。



自由学園創設者の羽仁夫妻は、
「簡素な外形のなかにすぐれた思いを充たしめたい」

帝国ホテルを手がけるため来日中だった
フランク・ロイド・ライトに設計を依頼したそうです。



帝国ホテルの建設では妥協を許さず再設計を繰り返し、
予算を6倍までオーバーしたところで
たまりかねた経営陣にクビにされてしまうロイド・ライトですが、
この明日館では高価なステンドグラスは敢えて使わず、
シンプルな直線の枠を組み合わせて大窓を現出してみせたのでした。



一方の帝国ホテルは完成直後に関東大震災に見舞われながら
ほとんど無傷であったことから伝説となりました。

巨匠と呼ばれる人だけあって、
依頼者の思いには真摯に応えるということなのでしょうか。



大窓の内側は二層構造。
二階は当初から大食堂になっていて、
現在でも結婚式やレストランとして使われています。

当時の女学生たちが使っていた椅子と、
現在使われている椅子が並べて展示してありました。
デザインは同じですが、大きさが随分違っています。
こんなところでも、時代の流れを感じるさせられるのですね。




下階のホールは喫茶スペースになっていて
入館料に200円プラスすると、
クッキー付きのセットがサーブされます。

小さな建物ですから、
慌てて見て回るとすぐに一周してしまいます。
ここで珈琲の香りに満たされながら、
ゆっくり時計のネジを巻き直してみるのもいいでしょう。


もっとも僕の腕時計はクオーツ発振、
しかもソーラーセル搭載なので
遅れも止まりもしませんけどね。



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