本山寺 初寅 火渡りの祭




摂津峡上の口のバス停を降り、
穏やかな田園の広がる山村を抜け山への坂道を登るとやがて神峯山寺。
それを通り越してさらに山道をずんずん登った先にある、奥の山寺が本山寺。

そこは役小角を開祖とする正統派修験道場。毎年新年3日に、初寅会と称して修験僧による護摩焚きが行われているのです。

下馬先まではなんとか車で行けますが、小型車でも離合困難な山道です。
ですからほとんどの参拝者は下から歩きます。
まあ、徒歩というよりハイキングで、たぶん1時間以上はかかります。
そんな場所でも、新年の初寅会は大盛況で
毎年大勢の人々があつまります。



護摩焚きの始まりは、清めの破魔矢を四方に放つ儀式から。
破魔矢を拾うと幸運がもたらされるとか。
取り囲む観衆は、息を詰めて矢先を見つめていました。



法螺貝の厳かな音色が響く中
繰り返される般若波羅蜜多のリズムが徐々に強まり
最高潮を迎えようとしたその時、
紫の衣を纏った修験僧がすく、っと立ち上がって
焚き木の前へ進み出て、朗々と奏上を述べ始めました。

一度に空気がしん、となったその瞬間、
いよいよ松明へ火が放たれ
ぼう、という鈍い音とともに
覆い被された檜の生葉からもうもうと煙がいぶり始めます。

その火がやがて井桁に回ると
突如として炎が沸き立ち、天に向かってごう、と吹き上がりました。

祈願の梵字が書かれた護摩木が
次々と炎に投じられ、
読経の声と法螺貝の音が
うねりながら炎をさらに空へ押し上げ
護摩焚きは荘厳なクライマックスへ向かいます。




燃え盛る炎が一段落し、そろそろイベント終了かと思われたその時、
僧たちはおもむろに残り火がくすぶる松明の井桁を崩し、
丸太を地べたに並べ始めました。

実はこのお祭り、火が消えた後がメインイベントなのです。

たった今まで燃えていた垂木の上を裸足で渡る、という火渡りの儀式です。
それも、修験僧がやってみせるだけでなく、一般参加可能なのです。

そんなアブナイこと、なんで好んでやるものかと思いきや
護摩火を囲んでいた観客たちは、ぞくぞくと火渡りの列に並んで靴を脱ぎ、
煙が立ち込める垂木の上を渡っていきます。

渡れば一生、無病息災なんだそうですけど、
私は見てるだけで充分ですよ。

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