旧街道 五條新町




奈良、五條新町。

伊勢街道と紀州街道の交差上に位置し
吉野川の船着場も備える交通の要衝として栄えたそうな。

今では最寄り駅の発着が一時間に上下一本づつだけとなって
人通りは少し寂しくなったようですが、
街道沿いは今でも宿場町の面影を色濃く残しています。



古い町並みはそこに住む人々が普通の生活を送りながら
自発的に残してきたものだといいます。

そういえばヨーロッパあたりには
ベランダに花を飾るだとか屋根の色を統一するだとか
むやみに生活感を出さないことで
統一美を守る古街があると聞いたことがあります。

電柱から野放図に伸びる電線や
物干しに吊るされた洗濯物がそのままのこの町ですが、
雑然さよりもどこか懐かしい落ち着きを感じるのは
また違った美意識とルールが存在するからなのでしょう。



すぐ裏手には吉野川、そして熊野へ連なる大峰の山並が広がり
その水墨画のような景色に思わず見とれてしまいます。



かつて、この山を越えて伊勢参りへ行く鉄道が
計画されたことがあったそうですが
急激な時代の流れでいつの間にか立ち消えになり、
工事途中で放棄された高架が使われないままに取り残され
これもまたこの町の落ち着いた景色の一部となっています。



軒先にかかる看板たちは
ひとつひとつ個性的で味があり、



立派な煙突をもつ造り酒屋もあります。



裏路地の風情もそのまま残されているのが嬉しいですね。



もともと奈良は京都のような派手さの無い静かな古都ですが、
その奈良の観光コースをも外れて
さらに鄙びた感傷に浸りたいという玄人筋にこそ
オススメの町なのかもしれません。

だから、

わざわざ行ってみたけど
「何もないじゃないか」
って怒らないでくださいね。





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