A3




年明け早々に風邪をひいてしまい部屋に引きこもることになった。

でもそのおかげで、前々から少し気になっていた森達也著「A3」を読む機会を得た。
オウム真理教モノと聞けば、すでに多くの人は辟易し目をそらせたくなるだろう。
だがこの本は少し違っている。

表紙カバーの折り返しには、次のようなメッセージが書かれている。

あなたには知ってほしい。
立ち止まって振り返ってほしい。ここまでの足跡を確認してほしい。目を凝らせばきっと見えてくるはずだ。そして思い出してほしい。考えてほしい。あの事件はなぜ、どのように起きたのか。彼と事件によって、この社会はどのように変わったのか。現代はどのように変わりつつあるのか。彼とはいったい、何ものであったのか。何を思い、何を願い、何をしようとしていたのか……。

著者は地下鉄サリン事件以降、長期にわたって関係者への濃密な取材を続けた上で、麻原彰晃と彼の弟子たちとの関係について一つの仮説を立てるに至った。
その仮説は、さらに民意とマスメディアとの関係に投影され、危険な方向へ収斂しつつある現在日本社会の深層をも示唆するものだ。
僕自身、17年前の過熱した報道を目の当たりにし、本当にもう見たくもないし考えたくもない。オウムに関する知識についてもセンセーショナルにとりだたされた一面をトレースしたものに過ぎない。だが、著者の提示するこの仮説には直感的に同意する。
そしてもう一度反芻することによって考えてみようとも思う。

最近の報道記事や映像、あるいは公的発言にどこか共通した違和感を感じる方には、是非一読されることを薦めたい。

何かを考えるヒントを与えてくれるはずだ。



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