信州戸隠の山奥にある「鬼無里」という村の名は、平安の昔この地に暮していた鬼女が京の武士に滅ぼされたいう伝説にいわれがあるそうです。
その鬼無里の集落を潤す渓流をさらに奥へと遡った場所にあるのが奥裾花渓谷。
麓の町が夏の暑さから逃れて一息ついた頃には、すでに鮮やかな紅葉が見頃を迎えています。
ごつごつと隆起する戸隠の山々や渓谷に点在するむき出しの大断層は荒れ狂った大地がかつてそこにあったことを示していますが、長い年月をかけその傷を埋めた木樹は今艶やかな色に染まり、地表を癒やし続けています。
平安武士に退治された鬼女は「紅葉」という名だったそうです。都落ちして流れてきた彼女は京に焦がれるあまり狂って鬼になったといいますが、別の伝説では村人に施す貴女として崇められたとも伝えられているそうです。この美しい風景を目の当たりにすると、紅葉の名を持つ女性の伝説には後者がふさわしいと信じたくなりますね。
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