残雪の尾瀬へ


「夏がくれば思い出す」と歌われて一躍メジャー級の知名度を得た尾瀬。
歌のとおり、夏が近づくと遙かな湿原は花々でおおわれ、地上に降りた楽園のごとき光景を見せてくれるのですが、充実した設備とアクセスのしやすさから癒やしを求める人々が大挙して訪れるためここはもはや山というより観光地。
ところが、残雪が多い今の季節は少なくともハイカー以上の装備が必要だし、さらに平日ならなお人も少ないんじゃないか、ということで「静かな尾瀬」を期待して行ってまいりました。


早朝に新宿を発する高速バスに乗れば午前中にはもう尾瀬の入り口。
案の定客は少なく、しかも僕以外の全員は鳩待峠へ向かうマイクロバスに乗り換えるため戸倉で下車。なんでも鳩待峠からなら登らず湿原へ直行できる由。




たったひとり残ったアマノジャクな僕をわざわざ大清水まで送り届けてくれた運転手さんは、キャンプ用具一式を詰め込んでこの場所には不似合いな大きな僕のザックをよっこらしょとトランクから運び出しながら、「何泊くらいするの?」と笑顔で話しかけてくれました。
その屈託のないホスピタリティに感謝感謝。

踵を返して去りゆくバスに手をふって、閑散とした大清水の駐車場に残された僕は、これまた閑散とした土産物屋の前で身支度を調えた後、尾瀬沼へつながるゲートを越えて歩き始めました。

そこからしばらくは和やかな砂利敷の林道がつづきますが、1時間ほどで登山道に至り、たっぷりと残った残雪が出迎えてくれます。
中途半端に溶けてしまうとぬかるんだり凍りついたりでかえって歩きにくいものですが、ここまでしっかり雪が残っていればかえって歩きやすいものです。(むろん、雪道を歩けるちゃんとした山靴を履いていればの話ですが)。思いのほか急な登りをこなして峠を抜けると、燧ヶ岳を浮かべるかのように豊富な雪解け水を滔々と湛えた尾瀬沼が姿を現し始めました。


雪割れの湿地からそろそろ顔を出し始めたミズバショウを眺めながらしばし湖畔に沿って歩くと、もう今夜のキャンプサイトである尾瀬沼ヒュッテにたどり着きます。
尾瀬沼ヒュッテ周辺は長蔵小屋やビジターセンターなどが建ち並んで一大キャンプ村を形成しており、ひとしきり雪道を歩いてすっかり山気分になっていたところを「やはりここは尾瀬だった」と改めてその立派さに感心させられたのでした。

キャンプサイトは板張りデッキの超豪華仕様、トイレはなんと洋式水洗のうえにトイレットペーパーまで常備されて至れり尽くせり。ただ、20張分ほどのスペースしかないため、山のキャンプサイトでは珍しい完全予約制なんだそうです。雪の尾瀬で小屋にも泊まらずテント張ろうなんて朴念仁はそうそう居なさそうですが、それでも僕の他に3張ほどの先客がいましたから、尾瀬の人気は推して知るべし、ですな。

さてさて、こうして尾瀬沼にキャンプを張り、3日ほどかけてノンビリ尾瀬ヶ原を横断しつつフレッシュイオンをカラダいっぱいに充填してまいりましたので、撮りためた写真を明日からチビチビ、アップしていきたいとおもいます。

楽しみにしている、なんてヒトがどのくらい居るのかは分かりませんけど、乞うご期待。



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