佐々里峠をこえる




京都北山という名前からだと
京都市街の背景になってる、ちょっとした裏山
のような印象をうけるかもしれませんが、

一歩その山へ入ると
一つ峠を超えるだけでは抜けられない
幾重にも山が重なる深い森林帯が日本海側まで続き
冬にはその日本海からの雲を砕き
福井に豪雪をもたらすほどの高度をもつ
大分水嶺でもあります。

実は「北山」というのは京都側からの通称で
本来は丹波山地という名をもつ
れっきとした山岳地帯なのであります。

また、若狭へ抜ける道は多くありますが
全線舗装路は数少なく
鞍馬から花背峠を越え、
佐々里峠ー五波峠と渡って
若狭湾へ抜ける今回のルートの他は
もう少し西に全長1.3kmの堀越トンネルを有する
国道162号線があるだけで
あとは皆、徒歩で越える山道を通らねばなりません。

どうでしょう、
「えらいこと山なんやな」
って雰囲気が伝わったでしょうか?

その舗装路を走っている時でさえ
今のように降り出しそうな厚い雲に陽が遮られ
鬱蒼とした山道がさらに暗くなってくると
なんだか漠然とした不安に、心が乱されてしまいます。

昔の運び人たちは、大きな荷を背負い
徹夜でここを歩いたそうです。
月明かりが遮られれば、そこは真の暗闇だったでしょう。

「若狭から京まで、夜通し運べば
塩漬けしたサバがいい塩梅になる。」

運び人たちのこの言葉に込められた
誇りと強かさを
改めて思うのでした。


「お疲れ様ーっ。」
石室を眺めながら感傷に浸っていると
ウシロからおちゃさん、
続いてはまちゃんが追いついてきました。

京へ引き返す、って選択肢は
いつの間にか立ち消えになり
頭のなかは「若狭へ行ってサバを喰う」
ってモードに切り替わっています。

この鬱蒼としたお天気にも
「このくらいのほうが涼しくっていいねぇ。」
などと、おちゃさんは言い放ちます。

そうですね。
人が強かなのは昔に限った話じゃありませんでした。

おちゃさん、やっぱりあなたは
マットウで太っ腹でリッパな人だ。

*****

さて、ひとつのネタで引っ張るにも
もうアキられそうなので、
そろそろ最後にしたいところ。

残りは峠が一つと下り坂
それに海辺の町とその夜と翌朝。

ン?、あと一回で収まるかな?

ちゃんと完結できたかどうか
その顛末は、また次回。



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