ようやく鯖街道へ



早朝の澄んだ空気に
漕ぎ手を鼓舞するコックスの声がテンポよく響く。


明るくなり始めた障子の向こうに溢れる
青くて若い気配を心地よく感じながら
畳の匂いのする布団の中でもうしばらく間、
まどろみを楽しむ
清々しい朝。

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ニワトリすら三歩の間は覚えているワケで
ましてニンゲンであるワタシが
昨日の教訓くらいは忘れようがありますまい。

まあ実際は、
スパイシーな胃から供給される不健康なエネルギーを使って
鈴鹿の峠を無理やり越えてしまった疲労によって
昨日は晩飯の後すぐに(つまり飲まずに)
布団に潜り込んでしまい、
そのまま朝まで目が覚めなかったというだけですけどね。

でもそのおかげで、今朝はかくのごどく
スッキリとした目覚めを迎えることができたのでした。

ここは琵琶湖の南端、瀬田川の中洲。
大津京遷都からの歴史をもつ唐橋のたもとという、
なかなかのロケーション。

今日のルートは
この場所から琵琶湖も見ずにそのまま京都に入り、
そこから北山を越えて福井若狭まで

日本海で水揚げされたサバを
夜通し担いで京へ運んだとされる歴史的街道
その名も「鯖街道」を逆トレースいたします。

「鯖街道、京は遠ても十八里」と歌にもあるとおり
一里は3.9km、大津から京都まで30km足らずなので
今日の工程は100kmホドということになりますか。

ゆったりと朝食をいただいた後で
のそのそと自転車に乗り込み、
まったりとペダルを回しつつ
京へと向かうのでありました。



そして京では出町柳、
鯖街道の入り口の
鴨川に架かる橋の上で
「京都やねぇ。」
と、さっそく休憩。
「せっかくだから下鴨神社にお参りでも?」
「いいネェ。」

毒気の抜けた今ならば
楽勝、とはいわずとも随分ラクができるのでは?
と、この頃までは余裕をぶっこいていました。

それは当然、
ここまではほぼ平地ですからね。



鞍馬から花脊峠に上がる間に
昨日の苦闘を思い起こさせる油汗が
今度は全身から流れ出す事態にいたって
ようやく自らが置かれた現状を把握します。

こちらの都合で坂が緩やかになる
なんてことは絶対にありません。

そしてここ花脊峠は、

京都近辺のクライマーたちが
自らにムチ打つハードトレーニングのため
こぞって通うMな坂道。

ナメちゃいけません。

峠に辿り着いたふたりは
笑顔のようにもミエますが、
これは
「昨日よりラクなハズなんちゃうの?」
というニガ笑いなのであります。

付け加えますと、
今日は峠のピークを3つも越えなきゃいけません。

これはまだ1つ目ですから。

それになんだか空の雲行きも怪しくなってまいりました。

そりゃ今は梅雨ですから。

さあ、進んで山道に挑むのか
それとも踵を返して京にもどるか?

その顛末は次回に続く。




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