おやすみ 富士山レーダー

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山中湖を過ぎ、富士吉田の市街地手前の富士山を望む小高い丘の上。

あの山頂の厳しい風雪に35年間耐え続けた美しいドームがここに移設され
芝生に覆われた公園で遊ぶ子供たちを静かに見守っています。

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五合目まで車道が通り、夏にはハイキング気分で登れるような錯覚に陥る富士山ですが、遮るものなく海にその身を晒すこの山には、冬になると信じられない程の強風が襲います。

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特に厳冬期は、その強風と氷点下の冷気でコンクリートのように固くなった氷で守られ、熟練者でないと立ち入る事が難しい、厳しい極地と化すのです。

自然の猛威の中、必死の思いでようやく辿り着いた山の頂きでこの巨大な人工の精密機械を目の当たりにすれば、
「なぜ?  どうやって?」 と、思わず感嘆をもらさずにはいられない、
富士山レーダーは、そんな奇跡的な建物でした。

今、そのドームは記念館となって公開されています。
入館料600円とちょっとお高めですが、ぜひ中に入ってみてください。

館内では着工からたった2年という短期間でこれを極地に完成させた、当時の無謀とも思えるプロジェクトの記録を伝える映画や、富士山頂の冬の気象を疑似体験できるコーナーなどがあり、今も回転するレーダー本体を内部から見学することができます。

日本で最も過酷な場所に、こんなにも大掛かりなものを造った背景には、
予測不能な台風の動きによってもたらせられた多くの悲劇があったそうです。



今では気象衛星によって当たり前にもたらされる雲の動きも、当時はその全体像を知る術は無く、日本で最も高い場所から観測できるこのレーダードームが出来て初めて、本州付近での台風の動きを察知する事ができるようになったのです。

重要な任務を背負いながら、四半世紀を越え厳しい風雪に耐え続けてきた傷だらけのドームは、この地で穏やかな余生を過ごしています。
その誇らしげな姿は、成し遂げた者のみが纏う威厳のオーラに包まれているようでした。

ここでゆっくりお休みください。

ありがとう、富士山レーダー。





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