迷宮の地下神殿 大谷資料館


事務所の裏口と見紛うようなそっけない扉を開けると
乾いた砂粒を吸い込んでしまった時のような乾いて咽る岩の匂いが
奥下へと続く急な石段から、冷えた空気とともに吹き上げてきました。
その石段を恐る恐る下っていくと
突然目の前に広がる、巨大な地下空間。


ここは宇都宮にある、大谷資料館。
フランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテルの玄関ホールを飾ったことでも知られる、大谷石の採石場を一般公開する施設です。

切り出され続け運びだされ続けた石材の跡は、やがて作りかけのまま放置されてしまったような、あるいは岩山ごと崩れてしまうギリギリまで掘り尽くしたかのような、未完成と限界が危うく同居する巨大な空洞へと成長したのです。

壁や天井に刃の跡を残すその空間は仄暗い照明に彩られ、時間を隔てた異次元に迷い込んだかのような、不思議で神秘的な世界なのでした。




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