伊吹山ヒルクライムレース


巷のママチャリには電動アシストがついてモーターで車輪が回り、
足元のペダルは「原動機付自転車(原付)」

と区別するためのイイワケとなりつつあるというのに。


本来は自動車でしか登れない坂道をわざわざ苦労してペダルを漕いで登りたいという人たちがワンサカ集まるステキなイベントがあります。

「伊吹山ヒルクライム」。

除雪したてのドライブウエイを開通前に借り切って、
自転車でレースしちゃおうという企画です。


一応断っておきますが、
私は自転車乗りではありますがレーサーではありません。
去年の夏に、ふとしたことから坂道を登る快感を覚えてしまい、何やら普段は立入禁止の自動車専用道路を走れるイベントがあると聞きつけて、ついつい参加申し込みをしてしまったんです。

これが関西中のレーサーが集う大集会だとは気付かずに。


受付でゼッケンと共に”計測チップ”なるものを渡されます。
なんでも、これで個別のタイムを計測し瞬時に順位が集計されるのだとか。
慣れない手つきで愛車のフロントフォークにチップを取り付けながら、
なにやら場違いなところへ来てしまった違和感をジワジワ感じ始めます。



会場に咲いた綺麗な桜の下、最新鋭の高級バイクがズラリとピットに並んでます。

ますますヤバイ。

こんな光景、雑誌でしか見たことありません。自転車なんでエンジンはついてませんが、ブイブイ音が聞こえてきそうです。


11速ギアやコンパクトドライブは当たり前、電子制御の変速システムまで登場した昨今では、わが愛車はすでに時代遅れ。その彼も、実は10年前はイッパシのロードマシンとしてそれなりの脚光を浴びていた名車であります。


「今頃になってようやく君をレースデビューさせてあげる事ができるよ、苦労かけたね、スリスリ。」

セリフの後半は意味不明ですが、ともかく彼への愛着を新たにしました。走り終えたら今日もオイルを指してあげましょう。





ところで、その効能については不覚ながら存じませんが、
マジなロードレーサーはスネ毛を剃るそうです。


そして、ここに集う人々のスネは本当に皆一様にツルツルなのであります。
そのスベスベのスネを維持するため、彼らは日々カミソリでケズネをソリソリしているに違いなく、お肌のお手入れなど一切していない無防備なスネを彼らの前に晒している私は、とてつもなくハズカシイ気持ちになるのでした。



さて、いよいよスタート時間が近づき、そのスベスベのスネ(もとい、選手たち)が隊列を組んで会場からスタート地点へ向かいます。
ドライブウエイの料金ゲートがそのスタート地点なのですが、その建物が見えない前からズラリと自転車が並んでます。
選手の年令によってカテゴリ分けがされていますが、私のカテゴリだけでも1000人!近くが出場します。この人数が一斉にスタートしたら収拾つきそうにありませんから、30人ごとに30秒間隔でスタートしていくんだとか。
なるほど、それでタイムはあの電子計測チップで測るわけですな。

ちなみに、走りながら写真をパシャパシャやる行為は禁止されてます。
マジなレースなので当然です。
ケズネまで剃ってマジでトレーニングを積んでここへやってきている本気の選手たちに失礼の無いよう、私も本気で走ります。
ゼエゼエはあはあ言いながら、いやほんとにマジに走りました。
最後の3kmは目の前が暗くなってくるほど本気でした。実際はゴール手前1kmの下り坂からの登り返しでギアの変速を焦ってチェーンを脱落させてしまい、スピードダウンしたお陰で気絶せずに済みましたが、こんなに本気で走ったのは初めてです。
今年は残雪の影響で12kmのショートコースになったそうですが、ほんとよかった。この先5km走ったら途中でどっか壊れてました。

ゴールした後、上がりきった息を整えて改めて周囲を眺めてみると、空が随分近くに近づいてきていました。

選手の皆さんは清々しい笑顔。

ああ、きっと私もあんな笑顔してるんでしょう。


結果はカテゴリ中560番目あたりと、下から数えたほうが早い順位でした。
マジな選手たちに混じって走ったわけですから、順位なんて気にするほうがおかしいですが、ゴールで返した計測チップの代わりにもらった「完走証」を眺めながら、なんかもっと上に行きたい気持ちになってくるから不思議なもんです。

家に帰ってフロに浸かりながら、
「ケズネを剃ってみるか」
などど本気で考えてしまうのでありました。


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