春が近づくと、僕のアルバムは菜の花で埋まる。
「菜の花ばっかり撮ってくるなんて、あなたの前世はミツバチだったのかしら?」
半ばあきれて問う君に「ほんとうにそうだったかもしれないね。」
と真顔で答え、ますます呆れさせてしまったこともあった。
それほどこの花が好きなのである。
春はまだもう少し先だけれど、気の早い菜の花はもう咲き始めている。
今年が記録的な暖冬だからというわけではなく、北風が吹きすさぶ中、真冬のモノトーンに黄色い彩りを与えてくれる早咲きの種があって、毎年今頃に盛りを迎えているそうなのだ。
実はごく最近まで、僕はそのことを知らずにいた。
こんなにも菜の花が好きなのに、いったいどうしたことだろう。
「冬の間、ミツバチは冬眠しているから知らなくても当然ね。」
君がいれば、またそんな皮肉を言って小さな笑顔をくれただろうか。
北風はまだ冷たく、春はもう少し先である。
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