雨でも走る足摺岬


楽しみで自転車に乗る身としては
わざわざ雨風に晒されながら走るなど
普段ではあり得ないハナシなのですが。


岡山からさえ単線ディーゼルで5時間の道のり。
なにもしないで帰るなら、
一日がかりで四万十までやって来た意味がありません。

ところが、当日の予報は一日中雨。

雨ざらしで走る間じゅうずっと
顔面にイケメン型など押し付けておけば
のっぺらショウ油味のワガ面も
少しは味わい深く成形されるやも知れぬと思うほど、
ずぶずぶに濡れてふやけて不快なること間違いなし。

「行くの、やめよか」
この期に及んで
消極的退避思考が頭のスミをかすめたりしますが...。

まあ幸い、
南国土佐の気温は3月に入ってさえ雪のちらつく東京に比べて
10℃増しの真正「春」仕様。
「春雨じゃ、濡れていこうォ。」
と名台詞(本人じゃなくて後の脚本ですけど)
で月様こと武市半平太様だって申されております。

春の雨をプレシーズンの余興と思い
楽しむことといたしましょう。

説明が遅れましたが、
わざわざ四万十までやって来ているのは
「四万十足摺無限大チャレンジライド」
っていう早口言葉のような自転車イベントに参加するため。

四万十市から出発する足摺岬の海岸沿いと四万十川沿いの2つのコースを
二日に渡って走るのですが、
2つ合わせるとちょうど無限大マーク!
というので、この名前になったそうです。

べつに8の字って言っても間違いと思いませんけど
2日で240km余りの距離を走るんだから
無限大って言いたくなるのもわかりますよね。


さて当日。
「もしかしてハズレることだってあるかも?」
という微かでワガママな願いは当然叶わず、
予報のとおり朝からしっかり雨模様。
スタート前に整列させた自転車は野ざらしで
走る前からすでにずぶ濡れになり、
気分は下がりすぎて水たまりの地面にめり込みそうなほど。

「ホテルで朝ドラ見てたほうが楽しかったに違いない」
などと、現実逃避の妄想が現実味を帯びそうになってきたころ、

「時間ですので参加者の皆さんは整列してくださぁい。」

と、何事もないような明るいお姉さんの呼び声がかかり
しぶしぶテントの下から離れて身を雨に晒し、
どうせこれからたっぷり濡れるというのに
意味ないことだったなと思ったら
漸く踏ん切りがついたのでした。


まあ実際、走りだしてみるとそう不快なことばかりではありません。
春の雨は思ってたより暖かく、
寒さに震えるどころか
激しく回転する脚の熱を優しく冷ましてくれています。
しっとりと雨に煙る景色も
かえって風情があっていいものです。


もっとも、マッドガードをつけないロードのタイヤは
拾う路面の雨水をすべて車体と身体に撒き散らし、
あっという間に全身ドロまみれ。
これには相当凹まざるを得ませんでしたけれどもね。


なんとかたどり着いたゴールでは、
雨の中スタッフが全員拍手で出迎えてくれました。

参加者はハーフやショートを含めても300名程度と
決して大きくはない大会ですが、
コース上の主要位置には必ずスタッフがいて
適切な誘導を行ってくれましたし、
エイドステーションでも沿道でも、
地元の方々から暖かく声援を送って頂きました。

雨に凍えることがあっても心は温まる
そんな気持ちの良い大会ですね。

さ、ホテル帰って風呂入って、
明日もがんばろ。



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